事例2 Valley Charter School
―信教の自由とチャーター・スクール・システムの葛藤―

参考資料  Luis A. Huerta ; Losing Public Accountability: A Home Schooling Charter 「Inside Charter Schools-The Paradox of Radical Decentralization-」Edited Bruce Fuller , Harvard University Press , 2000 , PP 177-202
所在地 カリフォルニア州 オークランド近郊の山岳地にある小さな町(農村)
町には一つの小学校Valley Elementary School―(k−8)/生徒数―約200名―があり、Valley Unified School Districtが管轄する唯一の学校
ISP Independent School Program ( 自学自習プログラム)を履修する生徒が80人―いずれも学校に登校せず、家庭で両親が教育する(Home-Based Education)。
ISP生徒の特性
  1. entral Valley近郊に居住する伝統的なキリスト教(福音派evangelicalism―形式よりも信仰を重んずる熱心なキリスト教右派)
  2. サンフランシスコ湾岸地域に居住する反政府を貫く自由主義者グループ(anti-government libertarian)
★ISPプログラムは1990年から開始され、年々参加者は多くなった。学区は貧しい財政事情から、ISP家庭のニーズにどう対応するか苦慮
1992年 カリフォルニア州でチャーター・スクール法成立
(2002年秋現在、452校開校している)
その後、教育長(Frank Gomez),学区内の学校教員を説得し、チャーター・スクール開設の支持を取り付ける。
1994年 Valley Charter School (VCS) が認可され、開校。
1.開校直後の混乱
  • 当初ISPに参加している80名でスタート。その後、新聞報道(Oakland Tribune紙)で知ったホームスクーラーからの問い合わせ殺到し、5ヶ月後に500世帯(ホームスクーラー)の応募、広告宣伝なしに2年後750人の在籍者数となる。
  • 学校長(school director)は、当初からISP担当者(専任一人のみ)が任命され、生徒数増大に伴い、常勤5人/非常勤50人の教師を雇う。
2.人種構成と生徒の地理的分布
  • 1998年の段階では、人種構成はつぎの通り。
    @ アングロサクソン(白人)―89% Aラテン系―7% Bアフリカ系―3%
  • 生徒の出身地域の分布は広範に渡り、サクラメントからオークランド、ベーカーズフィールド近郊450マイル四方に及び、14カウンティーにまたがる。
3.地理的拡大の背景 
  • 個々の家庭が学習の場で、伝統的な校舎や教室は不要A幾つかの地点に、リソース・センター、オフィスがあるだけでよい。
  • ほとんどの書類/教材その他教務用の通信はインターネットで処理される。
  • 近隣にはホームスクーラーが多数点在しているが、他の学区はホームスクーリングに対しては依然として懐疑的で、導入を回避した。
  • 一人の教師が抱える生徒数は、家族(兄弟/姉妹)が対象になるので、100人近くが可能。フォーマルな学校と比べはるかに管理監督しやすい。
4.教員チームの役割―親が主役で、教員は脇役―
VCSの場合、専任スタッフの前歴は、元公立学校教員、幼稚園教員、自らもホームスクーラーで、ホームスクーラーを対象としたカバースクール(AFFIDAVITを提出した私立ホームスクール学校―キリスト教関係者の支援組織―)の元責任者など。後年、CA州の認定した教員免許取得者となっていった。彼らの役割
  • 子どもの学習指導の主役は父母達で、スタッフは支援者(SUPPORTER)に徹する。彼らのニーズをモニターし、指導助言する。
  • 一人のスタッフに50〜15世帯、子どもの数で100人くらいを担当する。面接し、VCSの独自のカリキュラム・システムを説明し、子ども一人一人の学習計画を協議し、継続して監督する。
  • 家庭学習の補助として、地域別に集団授業(セミナー)を定期的に開講して、子どもの参加を促す。例えば、理科/歴史/体育/美術/コンピュータ教育などの教科指導や、コーラス/器楽演奏/読み・書き教室などの特別教育活動、サークル活動などを企画・実施する(自由参加)
  • 学校行事としてフィールド・トリップ(社会見学/遠足)の企画・実施
  • 親達の相談窓口となり、カウンセリング/ガイダンスを行う。
スタッフには、“Education Counselor” ”Grade-Level Coordinator” “Consultant” 等の名称が使われたが、Education Coordinator で現在統一されている。
VCSの課題(ホームスクーリング・チャーター・スクールの課題)
  1. VCSで学ぶホームスクーラーのディレンマーVCSには二つの極端な宗教的、政治的な保守グループがある。そのほとんどが、政府が管理する公教育システムから独立して私的なホームスクール方式を固守している。CS方式で、公費でVCSに所属する家族は、内部から「裏切り」「背反」と誹謗され、外部からは「宗教教育」に公費を支出することへの教育当局への批判に立たされている。
  2. 州や地方学区にとって、VCS方式は過度にインフォーマルすぎるので、生徒の学習成果を評価し学校の教育成果をより客観的に評定するというアカウンタビリティーが、ほとんど欠如している。(州の学力テストでは、学区の平均スコアを若干上回っている)
  3. インターネットによる遠隔教育の実態と問題点

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